大竹 幾久子
戦 死
伯父は
フィリピンで
戦死した
撃たれて歩けなくなった戦友を
背負って
退却している時に
地雷を踏んで爆死した
負われていた人は
生き延びて
戦後すぐに
未亡人となった伯母に
形見の鉄兜を届けに来て
伯父の最後を語ってくれた
父は
爆心地のすぐそばで
原爆死した(らしい)
遺体もなく
その最後を語ってくれる人もいない
2018年羅府新報新年懸賞文芸(詩)選者の若林道枝氏 評
ぎりぎりに言葉を抑えた、特に後半に、まだ表に現れていない作者の思いが、読者を限りなく深いところに誘うようです。詩の鑑賞は読者と作者との共同作業であります。詩人は読者を誘い込むように抑えた書き方が大事ですね。
